- 井沢は91年1月に『言霊』を刊行し、同年末から本シリーズの週刊誌連載をスタートさせた。これには当然、89年の冷戦終結宣言から91年のソ連解体への流れを意識した唯物史観批判の含意が推測される。そもそも井沢は20才前後で左翼運動の退潮を目撃し、そこから民俗学などの偽史的世界観に惹かれていったと思われるので、不惑を目前に自分の史観に確信を深めたことは容易に想像できる。その後、『「言霊の国」解体新書』(93年)、『虚報の構造』(95年)と、次第に日本社会批判や左翼系ジャーナリズム批判に踏み込んで行ったようだ。
ただ、91年初めを頂点として日本の景気は下降線に入り、いわゆるバブル崩壊が到来する。90年代半ばからは有効求人倍率の低落に歯止めがかからず、0.5%割れにまで至るし、この文庫版が出た98年前後は拓銀・山一・長銀・日債銀が次々破綻した時期だ。産経紙上の「教科書が教えない歴史」連載が評判になったのは、まさにその渦中の96年のこと。井沢は即座にこの連載への賛意を表明している。翌97年には小林よしのり、98年には藤岡信勝と共著を刊行し、「つくる会」人脈との関係が深化。文庫版の解説も、藤岡が担当している。
井沢は大学卒業頃にも石油危機に端を発した不況を体験しているはずで、その意味では70年代初頭と90年代初頭には共通点があったかも知れない。ただ70年代の日本が不況を切り抜けたのに対し、90年代以降は未だに泥沼状態。その差異に、おそらくは70年代的感性を原型とする井沢の枠組みが対応できるのか、それとも「つくる会」並みの「オヤジ慰撫史観」に収束するのか、その辺りが気になる。 - タイトルでもある『逆説の日本史』からもわかるとおり
既存の歴史的事実に異を唱える部分が多い本書なのである程度は日本史を
理解している人の方が内容を理解できると思う。まったくの初心者には少々難しい。
言霊や穢れといった考え方は筆者の専売特許というわけでもないのだが
その理論はわかりやすく好感が持てる。続刊が続いているタイトルだが
後の巻になればなるほど独自色は薄れていく。そういう意味でもこの最初の巻がオススメだ。 - 井沢元彦は私の歴史の先生である。
学生時代、地理と歴史をまったく勉強しなかった私は、やたらに本は読み飛ばすものの、いろんなところで理解に詰まってしまう、という苦労をしていた。今も。
歴史の勉強はしたいが、無味乾燥な参考書など読むのは嫌だ、という私にぴったりだったのが、「逆説シリーズ」だった。なにしろ、井沢元彦の「語り」のうまさはピカ一である。
まず、飽きさせない。文章が面白くなかったら、何年に誰がどうした、なんてものを延々読むことなんかとてもできない。
そこに多少の偏見や思い込みがあってもなくても、構うものか。大筋が頭に入りさえすればいいのだ。
私のような怠惰な人間にも読み進むことが出来る唯一の歴史の参考書(?)、それが「逆説シリーズ」だ。
今ハードカバーのほうは江戸時代まで行っているが、幕末から太平洋戦争までの歴史にも特に弱い私は、早くそこのところの勉強もしたいと楽しみにしている。
で、まず「1」から始めたいが、ここでは、特に卑弥呼の死と皆既日食、を結びつけた説を紹介した点を評価したい。2回目の皆既日食が、1回目の悪夢を呼び起こし、巫女たる卑弥呼の霊力が否定され、殺された、というのは説得力のある説である。
「民族の幼少期に経験した悲劇が、トラウマとなってその後の歴史に長く影響を及ぼす」というのは、鋭い指摘で、ユダヤ民族などもまさにそうだ。民族を一人の人間に例えた場合の心理学的な見方というものも、もっと研究されていい。ただ、日本の場合は、「その悲劇」がなんなのか、というのがあまり研究されていない。そもそも学界にはそういう視点がないだろう。
井沢さん、学者どもに相手にされなくても気にせず、これからも私のために歴史を面白く書き続けてせめて太平洋戦争まで行ってくださいね。保阪正康などの昭和史研究の本も出ていますが、文章の面白さではあなたに及びませんから、井沢さんの書いた昭和史がぜひ読みたい。 - 前半は「和」、「たたり」をキーワードにして日本史・神話などを読み解いている。教科書には出ていない発想は異端かもしれないが、真偽の判断はさておき、理論の飛躍や破綻は感じられないし、様々な考え方を知ることは興味深いことだと思う。後半の朝鮮半島と天皇の関係などは衝撃的だが感心した。今まで朝鮮の歴史にも民族性についても全く興味がなかったが、皇族の出自にも関係しているとなれば今後は関心を持っていきたい。
序論で筆者の特異な歴史研究の方法の正当性を解説しているが、根拠の例示の繰り返しは不必要であるばかりでなく、一部の比喩には無理があった。また、終章での天皇陵の考古学調査を許可しない宮内庁への批判や、朝鮮人の異常な民族意識に対する批判はやや辛辣で、筆者の気持ちは分かるが、考古学の方法とは直接関係ないので、もっと簡単でよい。 - 史料だけで構築された歴史学に待ったをかける挑戦的な試み。
幾つもの間接的な手掛かりから一つの答えをつむぎ出すそのプロセスはまるでミステリー小説の推理を解説しているかのようで興味深く読める。
しかし、あくまで通説となっている歴史学を知ってこそ、本書の真の主張が理解できるのだろう。
また、第一巻となる古代黎明編は、「わ」の国の思想・哲学に重点を置いた記述となっていて、日本人論的な要素が非常に強い。この要素をベースに以降の分析が進んでいくので、いわば「逆説の日本史」を読むための基本理念とも言える重要なポイントである。ここでつまずいたり、完全に否定的な感想を持った場合は読み進めるのが困難になると思われる。
このシリーズに興味を持ったら、必ずこの「古代黎明編」をまず読むべしと、強くお勧めします。
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